日本ヒューレット・パッカード(HPE)は3月7日、都内でストレージ製品の戦略説明会を開催し、ハイブリッドITの運用を支援するツール群について説明した。

説明会には、同社 ハイブリッドIT データプラットフォーム統括本部 エバンジェリストの高野勝氏、米国からヒューレット パッカード エンタープライズ HPEストレージ部門 製品管理&マーケティング担当ディレクターのヴィッシュ・ムルチャンド氏と、同 HPE Nimble Storage 分析&カスタマーサポート担当 バイスプレジデントのロッド・バグ氏が出席した。

冒頭、高野氏は「昨年末に5カ年計画が完了した。2月からは米国本社のCEOがメグ・ホワイットマン氏からアントニオ・ネリ氏に交代し、これまで分社するなど経営のスリム化を進めてきたが、今後は筋肉質の経営体制を目指す。われわれのビジョンでもあるハイブリッドITを実現するため、オンプレミスとパブリック・プライベートクラウドをつなぐ多様なSaaSを提供している」と話した。

  • 日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT データプラットフォーム統括本部 エバンジェリストの高野勝氏

    日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT データプラットフォーム統括本部 エバンジェリストの高野勝氏

実際に同社では、クラウドベースのモニタリングを行う「HPE InfoSight」、マルチクラウドに接続可能なストレージを提供する「HPE Cloud Volumes」(2月時点で日本では未展開)、パブリッククラウドとオンプレミスをまたいでシンプルなマルチクラウド管理を提供する「HPE OneShere」(同)を発表している。

  • 「HPE Cloud Volumes」の概要

    「HPE Cloud Volumes」の概要

  • 「HPE OneShere」の概要

    「HPE OneShere」の概要

HPEのストレージ戦略とは

続いて、登壇したムルチャンド氏は「われわれの戦略はハイブリッドITのシンプル化と、コンピュートおよび分析を行うエッジにインテリジェントとパワーをもたらし、サービスを統合する専門技術を提供していくことだ」と述べた。

  • ヒューレット パッカード エンタープライズ HPEストレージ部門 製品管理&マーケティング担当ディレクターのヴィッシュ・ムルチャンド氏

    ヒューレット パッカード エンタープライズ HPEストレージ部門 製品管理&マーケティング担当ディレクターのヴィッシュ・ムルチャンド氏

同氏によると、顧客は2つのカギとなるエリアに焦点を当てており、1つ目は現行のビジネスや業務を維持・成長していくこと、2つ目は業界において競争力を高めるため新しい製品・サービスを提供することだという。

そのためには、現行のデータセンター(DC)の維持に加え、新しい領域・アプリケーションを開拓すべく、パブリッククラウドやハイパフォーマンスコンピューティングなど、新しい技術にも取り組まなければならないと指摘している。

しかし、アプリとデータ間には密接な関係があり、これを駆動させているのは新しいビジネスモデルが企業にとっての挑戦になっており、運用の効率を高めなければならないという。

ムルチャンド氏は「アプリとデータ間のギャップは、読み込み時間が長くなるなど、アプリが求めるデータがあるが、データが追い付いていない状況だ。コンシューマでは我慢できるが、ビジネスでは損失になり、アプリとデータのギャップの原因は1つだけでなく、ストレージとネットワーク、コンピュート、ソフトウェアなどが原因で発生する。インフラが成長するためには、この部分にメスを入れることが重要だ」との認識を示す。

このような業界の傾向に対し、同社のストレージ戦略は「予測可能性」「クラウド対応」「タイムレス」の3つのカギとなる領域にフォーカスする。以上の3分野に加え、新しい領域としてコールドデータと非構造化データにも注力し、SDS(Software-Defined Storage:ソフトウェア定義型ストレージ)を業界標準で提供するほか、強力なパートナーシップで価値を提供していくという。

  • 注力する4分野

    注力する領域

予測可能性では、インフラ全体のスタックにまたがり、予測を行うことで障害予兆を事前に検知し・対応する「HPE InfoSight」を提供している。

クラウド対応については、データをクラウドレベルまで増減を可能にすると同時に、オンプレミスとクラウド間で相互的にデータが移行できるようにすることが肝となるためCloud Volumes、「HPE Cloud Bank Storage」で対応する。

タイムレスに関しては、柔軟性を持ち、導入したストレージをいつでも使えるほか、財務上でも例えば初期投資に投資するのか、運用資金に投資するのかといった面でも柔軟性を備えている。この領域ではSCM(Storage Class Memories)、NVMe(NVM Express)などの新技術のほか、「HPE GreenLake」やHPEファイナンシャルサービスを有し、99.9999%の可用性も提供している。

そして「HPE Cloud Bank Storage」について同氏は重点的に説明した。これは、AWS S3やMicrosoft Azure、Scalityなどのクラウドプラットフォームを活用しつつ、長期の保持、障害回復などデータのアーカイブが利用できるというもの。

ムルチャンド氏は「さまざまな環境でメディアサーバを必要とせずに迅速かつシンプルにバックアップできる。また、差分データだけを転送するため効率化が図れる。スナップショットがデータ保護製品の『StoreOnce』のデバイスに保存され、カタリストコピー(メタデータ)を複製した上で、重複排除され圧縮し、パブリッククラウド、オンプレミス、オブジェクトストレージに保存される。プライマリーストレージ、スナップショット、ローカルのバックアップデバイス、クラウドを連携する」と、説く。

  • 「HPE Cloud Bank Storage」の概要

    「HPE Cloud Bank Storage」の概要

自律型を目指す「HPE InfoSight」 - 将来的にはサーバなどに適用領域を拡大

今回の説明会では、バッグ氏が出席したこともあり、昨年11月に発表した機械学習によるAI(人工知能)のレコメンデーションエンジンのInfoSightに時間が割かれた。

同エンジンはNimble Storageのコアテクノジーとして培われてきた予測分析プラットフォーム。DCなどにおけるインフラの課題を事前に予測・防止する機能を備える。

  • 「HPE InfoSight」の概要

    「HPE InfoSight」の概要

バッグ氏は、ムルチャンド氏が指摘したアプリとデータ間のギャップの話を踏まえ「ユーザーにとっては非常に苦痛であり、ビジネスに悪影響を及ぼし、IT部門は頭を抱えることになる」と語る。

  • ヒューレット パッカード エンタープライズ HPE Nimble Storage 分析&カスタマーサポート担当 バイスプレジデントのロッド・バグ氏

    ヒューレット パッカード エンタープライズ HPE Nimble Storage 分析&カスタマーサポート担当 バイスプレジデントのロッド・バグ氏

これらの問題を解決するため、同社ではインフラを自動管理する「Self Managing(自己管理)」、あらかじめ起こりうる障害を予知し、対応する「Self Healing(自己治癒)」、与えられたリソースを最適化することでパフォーマンスを向上する「Self Optimizing(自己最適化)」により、自律型のDCを目指している。

  • 自己管理、自己治癒、自己最適化の3本柱

    自己管理、自己治癒、自己最適化の3本柱

現在はNimble Storageと3PAR、VMwareまでは同エンジンによる情報収集を可能としているが、自律型のDCを目指すために同氏は「今後は適用範囲をサーバ、ネットワーク、コンバージドの領域にも対象を拡大していく。そして、適用領域を達成するためにはAIのアプローチが必要となる。それを実現するのがInfoSightだ」と、強調する。

  • 自律型のDCを目指す

    自律型のDCを目指す

Nimble Storageでは、9年前から同エンジンのプロジェクトに取り組み、現在は1時間ごとにVMやホスト、ネットワーク、ストレージに至るまで多様な情報を収集している。世界中の顧客で1カ所でも障害が発生した際は、同エンジンで解析した上で、すべての顧客に適用させている。

これにより、顧客はPredictive Supportの自動化に加え、故障が発生する前に問題を特定し、レコメンドを行い、クラウド上のポータルを通じて事前対応ができる。また、インフラで得られた学習の結果を共有することが可能だという。実際、顧客の86%に事前に検知した情報を基に施策を提案し、99.9999%の可用性を担保しているため、問題発生から47分で解決している。

現在、同エンジンはSimpliVityからデータを収集しているほか、今後は比較的新しい世代の製品にも順次適用を拡大していくことを検討している。

  • サーバ、ネットワーク、コンバージドと適用領域を拡大していく

    サーバ、ネットワーク、コンバージドと適用領域を拡大していく