JR東海の新幹線新型車両N700Sの確認試験車が10日、同社浜松工場にて報道公開された。16両編成のN700S確認試験車が工場構内を走行し、シンボルマークも披露。グリーン車・普通車や運転台も公開された。N700S確認試験車は3月20日から走行試験を開始する。

  • 報道公開ではN700S確認試験車が工場構内を走行した後、外観や車内の撮影が行われた

N700Sの「S」はN700系シリーズの中でも最高の車両を意味する「Supreme」を表しており、車体に掲出されたシンボルマークも白地に金色の配色、伸びやかで勢いのある曲線が調和した「S」の形状などで「Supreme」のイメージを表現している。

左右両サイドにエッジを立てた「デュアル スプリーム ウィング形」と呼ばれる先頭形状、窓開口拡大およびレンズ形状最適化で視認性を向上させた前照灯(LEDライトを採用)、「S」を表現した先頭部の青帯なども外観における特徴となっている。報道公開ではN700S確認試験車とN700系を並べての先頭比較展示も行われた。

  • N700S確認試験車とN700系が並ぶ。横から見ると前照灯の形状の違いがわかる

  • 技術開発成果物としてN700Sのパンタグラフや空調、自走用バッテリーなどの展示も

車内についてはビジネスから観光まで幅広いニーズに対応し、機能性を考慮しつつ、やわらかな曲面を採用してくつろげる空間とした。グリーン車のコンセプトは「ゆとりある空間と個別感の演出」。横4列(2列+2列)の配置で、N700系の「シンクロナイズド・コンフォートシート」をさらに進化させた座席、荷棚と一体化した大型の側面パネル、室内温度や室内照度の均一化などにより、快適性向上を図っている。

グリーン車のシートは、くるぶしを回転中心とするリクライニング機構を採用するとともに、リクライニング時の座面・背もたれ角度を最適化し、太もも裏側への圧迫感を低減することで、長時間座っても快適な座席に。足もとのスペースが拡大され、フットレストも大型化。読書灯の照射範囲も拡大された。コンセントは全座席に設置している。

  • グリーン車は落ち着いた雰囲気に。長時間座っても疲れにくい新型シートを採用している

  • 普通車の座席はさわやかな青系でまとめつつ、N700系・N700Aとは異なる柄を採用。コンセントは肘掛に設置された

普通車のコンセプトは「機能的で快適な空間の創出」。横5列(2列+3列)の配置で、既存のN700系・N700Aでは最前列・最後列および窓側の座席のみだったコンセントを全座席に設置した。シートは背もたれと座面を連動して傾けるリクライニング機構を採用し、より快適な座り心地に。リクライニングレバーの形状も最適化し、操作性を向上させている。

グリーン車・普通車ともに車内照明はLED間接照明とし、光学的に最適な天井形状として室内照度を均一化。停車駅に近づいた際、荷棚の照度を上げることで荷棚にある荷物への注意を促すという。ドア上の車内テロップは画面サイズを拡大し、フルカラー液晶の採用で視認性が向上。側面パネルと空調吹出口を一体化し、広い吹出口を確保して室内温度の均一化も図った。デッキ部には曲面形状のパネルが採用されている。

今回公開されたN700S確認試験車は3月20日から走行試験を開始し、次期営業車両(量産車)に反映する新技術の最終確認を行う。その後は東海道・山陽新幹線のさらなるブラッシュアップをめざし、技術開発を推進する試験専用車として活用するとのこと。N700Sは2020年度の営業投入を予定している。

  • N700S確認試験車の車内・外観