血中のビタミンD濃度が高いと、がんになるリスクが下がる、とした研究結果を、国立がん研究センターが8日発表した。約34,000人を長期間追跡した大規模調査の結果だという。論文は英医学誌「BMJ」電子版に掲載された。

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    図 血中ビタミンD濃度とがん全体の罹患リスク(国立がん研究センター提供)

同研究センターの研究グループは、1990年と93年に行った疫学調査に回答した岩手、秋田、長野、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の8県に住む40~69歳の男女約3,4000人を2009年まで追跡調査。その間にがんになった3,734人と追跡調査対象者から無作為抽出した4,456人の計8,190人について保存していた血液中のビタミンD濃度とがん発症との関係を詳しく調べた。具体的には血中のビタミンD濃度が低い人から高い人へと4グループに分けると、最も低いグループを基準にがん発症のリスクを他の3グループと比較した。

その結果、濃度が最も低いグループを基準とした場合、2番目に低いグループはがん発症のリスクが19%低下、2番目に高いグループは25%低下、最も高いグループは22%低下していた。がんの中でも肝臓がんは、最も濃度が高いグループでリスクが55%、前立腺がんで同36%低かった。ほかのがんの多くでリスクが低下する傾向が見られたという。

同研究センターによると、ビタミンDは脂溶性でカルシウムとともに骨代謝で重要な役割を果たしている。近年の研究で細胞増殖を抑えたり、細胞死を促進する作用によってがん予防に効果があるのではないかと考えられている。

同研究センターは国立循環器病センターと共同で今回と同じような多数の人を長期間追跡した大規模調査を実施。マグネシウムを多く摂取している人は、少ない人に比べて心筋梗塞などの「虚血性心疾患」になるリスクが低くなるとの結果を、昨年9月に発表している。

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