赤ちゃんを迎えるにあたって、部屋作りに気を配る人は多いのではないだろうか。赤ちゃんのお世話のしやすさや育児グッズの収納もさることながら、転落や窒息、誤飲など、家の中で起こりやすい事故を防ぐ工夫も必要となってくる。

そこで今回は、事故予防の方法をモデルルーム仕様で紹介している「子ども事故予防センター Kidsafe」(東京都豊島区)を取材。7つの危険なポイントとその対策について、池袋保健所・長崎健康相談所の荒井和子所長に教えてもらった。

  • 豊島区の子ども事故予防センターを取材

玄関

まず注意したいのは、玄関ドアだ。子どもの手は小さいので、ドアの開け閉めの際、隙間に指を挟んでケガをしてしまうケースがあるという。

  • まずは玄関をチェック

「親がベビーカーの操作に気を取られている間に、指を入れてしまうケースも多いです」(荒井さん)。

子どもの手が届く範囲には、ホームセンターなどで売られている指挟みの防止グッズや牛乳パックなどを取り付けて、ドアの隙間を埋めるよう、対策をしておこう。

  • 指挟みの防止グッズなどでドアの隙間を埋めよう

洗濯機

また洗濯機にまつわる事故対策もしておきたい。子どもの頭は重いので、洗濯機の中をのぞきこもうとして、そのまま転落してしまうケースがあるという。水が入っていれば溺水しかねないし、ドラム式洗濯機の蓋が閉まり、そのまま開かなければ、窒息してしまう可能性もある。

  • 洗濯機の周辺にも危険がいっぱい!

洗濯機の近くに子ども1人でいさせることを避けたり、チャイルドロックを使用したりして、事故を防ごう。

さらに近年増えているのが、洗濯用パック型洗剤による事故だ。「飴だと思って口の中に入れてしまうことがあります」(荒井さん)。特に3歳以下の乳幼児に事故が集中しているそうなので、洗剤類などは子どもの手の届かないところに保管するようにしよう。

  • 洗濯用パック型洗剤の取扱いに注意(画像は「洗濯用パック型液体洗剤に気を付けて!-特に3歳以下の乳幼児に事故が集中しています-」(消費者庁、国民生活センター)より引用

トイレ

トイレも子どもが転落しやすいポイント。のぞきこんで頭から落ちてしまったり、便座に腰掛けておしりから落ちてしまったりすることがある。ドアは常に閉めておき近寄らせない、ドアの取っ手にカバーをかけて子どもが開けられないようにする、掃除用具や洗剤などを子どもの手の届かないところに置く、といった対策ができるといいだろう。

風呂場

親と一緒に過ごしていても、気をつけたいのがお風呂場だ。自力で立てる年齢になっても、お風呂の中で転倒しておぼれてしまうことがあるという。

「おぼれるときは、ギャーッと声を出す暇もありません。親が体を洗っていて、シャワーなどを使っていればなおさら、おぼれたことに気づかないケースもあります」(荒井さん)。入浴中は常に子どもの様子を見ておき、できれば小学校低学年までは、親子一緒に入浴するようにしよう。

また入浴中以外でも、お風呂に水をためておけば、子どもが転落し、おぼれてしまう危険性がある。「5cmの水たまりでも口と鼻がふさがれば、息ができなくなってしまいます」(荒井さん)。お風呂を使っていないときはお湯を抜いておき、なるべくお風呂場に近づかせないようにしたい。

  • イスなどを使ってお風呂の中をのぞきこもうとする子もいる

赤ちゃんを迎えるにあたって、お風呂の中で使う「首掛け式浮き輪」を準備している人もいるかもしれないが、こちらも使用方法に注意が必要だ。消費者庁によれば、空気を十分に入れていなかったために、浮き輪から首が外れておぼれてしまうなどの事故が起きているという。

  • 首掛け式浮き輪の使用方法にも注意が必要(画像は「気を付けて、浴槽での首掛け式浮き輪の事故!!-赤ちゃんは御機嫌でも一瞬も目を離してはいけません-」(消費者庁、国民生活センター)より引用)

入浴剤についても、溶けきらないうちに使用すると、子どもが誤って口にしてしまうケースがあるとのこと。お風呂で使う製品にも、十分に気を配ろう。

階段

また、家の中に階段がある場合は、ベビーゲートの設置を忘れずに。階段を上り下りする際、階段の柵の隙間から外をのぞきこみ、転落してしまう危険性もあるため、隙間を覆うように、カバーをかけるといった対策も有効だそうだ。

  • ベビーゲートと柵の隙間を隠すカバーの設置を忘れずに

キッチン

そして最も危険が多いといっても過言ではない場所が、キッチン。ざっと挙げるだけでも、荒井さんからは下記の危険が指摘された。

  • キッチンには危険がいっぱい!

・炎が出ないIHコンロを熱いと分からずに触ってしまうことがある
・冷蔵庫を開けてしまう
・ポットや炊飯器、電気ケトルを倒したり、湯気を触ったりして、やけどなどのケガをしてしまう
・包丁などの刃物が入った棚を開けてしまう
・ゴミ箱の中をあさり、危険なものを口にしてしまう

  • コードをかんだり、炊飯器のふたを開けてやけどしたりする可能性がある

引き出しや棚・冷蔵庫の扉などをロックするセーフティーグッズを使用する工夫が必要だが、荒井さんによれば、「キッチンの入り口にベビーゲートを設置して、入れないようにするのが一番」とのこと。何よりも近寄らせないことが、一番の事故予防策になりそうだ。

また誤飲の事故で最も多いのは「たばこ」とのこと。国民生活センターによれば、近年では加熱式たばこの、使用前後のたばこ葉が入った部分を食べてしまうといった事例も寄せられている。「日本での販売は禁止されていますが、海外から輸入された、液体を入れるタイプの電子たばこによる事故も起きています」(荒井さん)。

喫煙者がいる場合は、使用前後のたばこを子どもの手の届かないところに保管・処分する、使用後のカートリッジを飲料の缶やペットボトルに入れないといった対策が必要だそうだ。

ベランダ

ベランダでは、室外機にのぼって柵の外をのぞいたり、隣のベランダに移ろうとしたり、柵の下から頭を出したりする危険性があるという。

「最近では、マンションなど高い場所で生活していることで、高所に恐怖を持たない"高所平気症"の子どもも増えています」(荒井さん)。

ベランダに踏み台となるような物を置かない、ベランダのドアにロックをかけておくなどの対策をしておこう。

小さい子どもの死因、多いのは「不慮の事故」

荒井さんによれば、3歳未満の事故の8割は、保護者が一緒にいる際に起こっているもの。そしてこのうち6割は、保護者が目の前で見ている際に起きているという。また、0歳を除く子どもの死因の上位に「不慮の事故」があり、毎年300名以上の子ども(0~14歳)が不慮の事故で亡くなっている。事故は"起きるもの"と想定して、できる限りの対策をしていくことが、大切になってくるそうだ。

そして1歳までの事故で最も多いのは「窒息」。うまくゲップができているか確認したり、顔が埋もれてしまわないように、硬めの布団を選んだりして対策しよう。ベッド、ソファからの転落にも注意したい。

「家電や住宅事情が変わっても、従来から事故の内容は大きく変わっていません。子どもの事故は予測できないものではなく、予防ができるものなのです。対策によって100%事故が防げるわけではありませんが、命に関わる事態になる可能性を低くすることはできます。保護者として必要なことを、やっていけたらいいですね」と荒井さん。

今回紹介した「子ども事故予防センター Kidsafe」は、区民だけでなく、誰でも自由に見学できるそう。赤ちゃんを迎える前に、ぜひ一度足を運んでみてほしい。

子ども事故予防センター Kidsafe
住所: 東京都豊島区東池袋1-20-9 池袋保健所2階
利用時間: 月曜日~金曜日(9~17時)
休館日: 土曜日・日曜日・祝日・年末年始(12月29日~1月3日)