特撮テレビドラマ『仮面ライダーエグゼイド』のスピンオフVシネマ『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング』の第2作『仮面ライダーパラドクスwithポッピー』が、2月17日に公開初日を迎えた。本作は『劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』から2年後の世界を舞台にした3つの物語(トリロジー)の第2作目にあたり、仮面ライダーパラドクス/パラドと、仮面ライダーポッピー/ポッピーピポパポ/仮野明日那という、2人の仮面ライダーが物語の主人公を務めている。

東京・新宿バルト9では上映終了後に舞台あいさつが行われ、主演の甲斐翔真、松田るかと、3部作すべての演出を手がけた鈴村展弘監督が登壇し、『パラドクスwithポッピー』にまつわる熱いトークを繰り広げた。

  • 左から松田るか、甲斐翔真、鈴村展弘監督

人類に「ゲーム病」をもたらす悪性のコンピューターウイルス「バグスター」の参謀格だった仮面ライダーパラドクス/パラドだが、仮面ライダーエグゼイド/宝生永夢との数々の戦いを経て「命」の大切さを知ってからは、永夢のよきパートナーとして共に戦うようになった。パラドを演じた甲斐翔真は、満場の観客から熱い声援と拍手をもらってやや興奮気味に「この人数(3人)で、これだけの数のお客さんを迎えるのは新鮮ですね!」と、これまで常に10人前後のキャスト陣で映画舞台あいさつを行ってきたのと対照的に、少人数で大勢の観客を前にした率直な感想を述べた。

今回のスピンオフVシネマが決まったときの感想を尋ねられた甲斐は、「最初のころ、誰がVシネマで主役をやるんだろうという話をみんなでしていましたが、まさか3部作でやるなんて思いませんでした。しかも、この組み合わせで!」と、ブレイブ、スナイプ、パラドクス、ポッピー、ゲンム、レーザーという主要な『エグゼイド』のライダーすべてが主役のVシネマが作られたことへの驚きを振り返った。続いて「どんな話になるんだろう?と思って台本を読んだら、俺(パラド)が2人になるんだ~って、びっくりしました」と、今回の作品で現在のパラドとは異なる"黒いパラド"=ブラックパラドの登場にも言及した。

『エグゼイド』テレビシリーズ初期編を思わせる敵キャラのブラックパラドを演じるにあたり、甲斐は「本編の1年がなければこの2役は演じられなかった。これまでパラドをちゃんと演じてきたからこそ、ブラックパラドが生きたという作品でもあります。今回のように、ねじれた2つの役柄を『仮面ライダー』で演じることができてよかった」と、自身の演じる役についての思い入れと、2種類の芝居をこなす難しさとやりがいについて語った。

映画の中で好きなシーンを問われた甲斐は、「永夢を(バグヴァイザーで)撃っちゃうシーンですね」と即答。鈴村監督によると「あのシーンは甲斐くんからのアイデアで、台本とはかなり変えているんです。ただ撃つのではなく、パラドが永夢とすれちがって、振り返って撃つという」と、演技について甲斐からの提案があったことを明かした。

これを受けて甲斐は「振り返ったら、違う奴になっているという芝居をやってみたかったんです。あそこで永夢が撃たれるカットも好きなんです。あれなんて、男のロマンをくすぐるというか……。リアルさを出すために、血糊が噴き出す弾着はアメリカから取り寄せたものを使っているんですよ」と、永夢役の飯島寛騎と共に作り上げたハードボイルド風味のシーンの出来栄えに、満足そうな表情を浮かべた。

音楽ゲーム「ドレミファビート」から生まれた良性のバグスターで、東都大学付属病院CRの看護師「仮野明日那」から「ポッピーピポパポ」と呼ばれるゲームキャラクターにコスチュームチェンジする本作のヒロイン・松田るかは、「この回(初日舞台あいさつ)のチケットが発売開始から5分で完売したと聞いて、驚いています!」と語り、根強い『エグゼイド』人気の強さと、前作『ブレイブ&スナイプ』から続く本作への期待値の高さを実感した様子。

今回のVシネマでは、テレビシリーズでもなかったパラドとポッピーの「同時変身」が見られるのだが、これについて松田は「テレビの最終回でも、劇場版『トゥルー・エンディング』でも、仮面ライダーポッピーに変身するシーンがなかったんですよ。このまま(変身)ベルトをつけないまま終わるのかなって思っていただけに、変身することができて感慨深かったです」と、ふたたび仮面ライダーへ変身することができた喜びを語った。パラドとの同時変身(ポーズ)は2人の呼吸もピッタリだったそうで「特に『せーのっ!』とかタイミングを合わせることなく、スムーズにできた」と話していた。

撮影での苦労話として、松田が「ロープで縛られているシーンのとき、撮影途中で雨が降ってきたので一時中断となったのですが、一度ほどくと結び直すのが大変だということで、上にテントだけ張ってもらって、縛られたまま放置されていたんです(笑)」というエピソードを話すと、甲斐は「僕たちは、ああ、こりゃ(撮影)中止ですね~と思いながら(雨が止むのを)待っていた」と、思いがけない雨で撮影中断が長引いたことを明かした。そこで鈴村監督は甲斐に「(甲斐が)自分は晴れ男だから大丈夫って言うからしばらく待っていたんだけれど、ぜんぜん止まなかったね」と、さすがの晴れ男の神通力も効かず、結局撮影を中止して松田のロープもほどくことになった顛末を苦笑まじりに語った。

このように、あいにくの天候不良で泣かされた場面も多かった本作。冒頭部分でのパラドがアナザーパラドクス(ブラックパラド)と対面するシーンでは、曇天での撮影だけに全体に靄(もや)のかかった画面に仕上がっていた。甲斐がこのシーンについて「晴天で撮るよりも何か不穏な空気を感じさせて、雰囲気がよかった。結果オーライですよね」と感想を言うと、鈴村監督が「そういうのは"狙った"演出だって言ってほしい!」と厳しいツッコミを入れ、甲斐が思わず苦笑する場面も見られた。

鈴村監督は、パラド、ブラックバラドという2つの役柄を演じた甲斐について「甲斐くんは2役ということで、喋り方や見た目だけではなく内面的なところを変えてもらおうとお願いしました。そのあたり、上手く演じ分けてくれたので、僕も撮っていて(甲斐が)2人いるんじゃないかと錯覚するくらい、しっかりとパラドとブラックパラドの個性が立っていました」と、演技の巧みさを絶賛。

そして鈴村監督は「テレビシリーズを撮っていたときの甲斐くんは19歳でしたが、Vシネマ撮影中に20歳の誕生日を迎えたんです。ずっと『20歳になったら飲もう』と約束していたのですが、ある日いきなりLINEが来て『監督、20歳になりました。飲みに連れてってください』って……。コイツかわいいなと思った(笑)」と、プライベートでの交流の深さについて語った。

そして甲斐は鈴村監督の演出について「現場が楽しいんです。あっ、ほかの監督さんがつまらないというわけではありませんが(笑)。役者と監督との距離が近いといいますか、自分がこういう芝居がしたいという意見を受け止めてくれて、作品に生かしてもらえるというのが楽しく思えました。とても有意義な時間でした」と話し、役者の自主性やアイデアを尊重する鈴村監督を強くリスペクトする場面が見られた。

一方、松田の印象を尋ねられた鈴村監督は、「るかちゃんは、もうどんなことでもこちらの期待以上に演じてくれるので、安心してお任せできました」と、こちらもベタ褒め。劇中では、ポッピー/明日那が女子高生、メイド服、ウエディングドレスなどさまざまなコスチュームに着替えるといった華やかなシーンがあるが、これについて松田は「衣裳については、すべて鈴村監督の趣味です!」と、衣裳のチョイスが鈴村監督によるものだと強調。

鈴村監督は「ポッピーにこういう服を着てもらいたい、というみなさんの意見を代表して衣裳を選びました(笑)」とにこやかな笑顔で答えていた。また、松田は「コスチュームを着替えてひと言、みたいなところでは、自分なりにアイデアを出して、監督と相談しながら作っていきました。オタ芸をやるシーンもちゃんと自分でやっているんですよ」と、コスプレシーンをより魅力的に見せる演技についての工夫を語っていた。

本作では、主題歌「Real Heart」を松田が歌ったことも大きなトピックスとなった。松田は主題歌を歌った感想を「ホントに私でいいのかな?という思いがまずありました。いくつかあった候補曲の中から鈴村監督が『いちばんカッコいい曲を』と選んでいただいたのですが、決まった曲だとポッピーの声じゃ合わないかも……と言われて、明日那=松田るか自身の声で歌わせていただきました。バグスターの気持ちを語っているような内容の歌詞で、歌っていて心にこみあげるものがありましたね」と述べ、真摯な姿勢で歌唱に臨んだことを明かした。今後の歌手活動については「やってみたいですが、もっとしっかりレッスンを行ってからでないと、みなさんに申し訳ないですからね。がんばります!」と、謙虚な中にも強い意欲をのぞかせていた。

あらためて『パラドクスwithポッピー』の見どころについて鈴村監督は「3部作の真ん中なのでシリアス要素もコメディ要素もある、バランスを大事にした作品です。パラドとポッピーを主役に据えることで、人間にとって『バグスターとはどういう存在か』『バグスターはどこから来て、どこへ行くのか』をテーマにして作りました。バグスターは元になった人間の記憶や感情が入っていたりするので、人間以上に人間らしいんじゃないか……。そんなところに着目して作品を楽しんでください」と語り、一度ならず二度、三度と作品をリピードして楽しんでほしいと熱烈にアピールした。

最後に甲斐は、『エグゼイド』に携わったこれまでの1年半もの歳月を振り返って、「みなさんにぜひやってほしいこととして、『エグゼイド』テレビシリーズの第1話と、今回の『パラドクスwithポッピー』を見比べてみてほしいんです。1年半という月日で、どれだけ人は変わるのかということがわかると思います。演技もそうですけれど、顔も違ってくるんです。カメラを向けられると締まるというか、みんなの顔つきがぜんぜん違うんですよ。永夢なんて、ぜんぜん違う人みたいに(笑)」と、飯島をはじめとする出演者の顔つきや演技などが、最初のころと現在とではかなり変化・成長していることを強調。そして「『エグゼイド』と出会えて良かった、と思っています。これで最後、とは言いますけれど、きっとどこかでまたみなさんとお会いできる機会があるんじゃないかと思っています。まずはこの映画をたくさんの方に見ていただきたいですので、SNSなどで拡散よろしくお願いいたします!」と、大勢のファンに笑顔で呼びかけた。

Vシネマ『仮面ライダーパラドクスwithポッピー』は2月17日から、新宿バルト9ほか全国22館で劇場公開(2週間限定上映)。そして3部作の最後を飾る『仮面ライダーゲンムVSレーザー』は3月3日より公開となる。

なお、Blu-rayおよびDVDはPart1『ブレイブ&スナイプ』が3月28日、Part2『パラドクスwithポッピー』が4月11日、Part3『ゲンムVSレーザー』が4月25日に発売される。

『仮面ライダーパラドクスwithポッピー』あらすじ

聖都大学付属病院・再生医療センターが幻夢コーポレーションと共同で、バグスター育成ゲーム「バグスターをつくるぜ!!」を開発した。女医・八乙女紗衣子によると、このゲームが完成すれば、過去に消滅させられた人たちの"復元"への大きな足がかりになるはずだという。仮面ライダーエグゼイド/宝生永夢がパラドを、紗衣子がポッピーを育成するテストプレイに臨むが、永夢はパラドに襲撃されて重傷を負ってしまう。何者かに囚われたパラドは永夢との絆を胸に、もうひとりの自分"ブラックパラド"と対峙する……。

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