高級サルーンやスポーツカーのイメージが強いジャガーが、同ブランドで2台目となるSUV「E-PACE」を日本で発売する。伸びる市場に商品を投入するビジネス上の判断は理解できるが、それ以外に、ジャガーがSUVを作る理由はあるのだろうか。SUVを作るのであれば、ジャガー・ランドローバーには、この車種を専門とするレンジローバーというブランドがあるにも関わらずだ。その理由を新車発表会で聞いてみた。

  • ジャガー「E-PACE」の画像

    “サイズが小さい”ことと“新しく生まれたジャガー”であることを踏まえて、「BABYJAGUAR」(ベイビージャガー)とも呼ばれる「E-PACE」。サイズは全長4,410mm、全幅1,900mm、全高1,650mmだ

先入観をくつがえす2台目のSUV、狙うは新規顧客の開拓

ジャガー「E-PACE」は、ブランド史上最速のペースで販売台数を伸ばすSUV「F-PACE」に続き、同社が市場投入するコンパクトSUVだ。新車発表会に登壇したジャガー・ランドローバー・ジャパンのマグナス・ハンソン社長によると、E-PACEはジャガーらしいスポーティーなキャラクターと実用性を兼ね備える日本市場に適したクルマだという。デザインはジャガーのスポーツカー「F-TYPE」にインスパイアを受けている。クルマの性能についてはこちらの記事を参考にしていただきたい。

  • ジャガー「F-PACE」の画像
  • ジャガー「F-TYPE」の画像
  • 左が「F-PACE」、右が「F-TYPE」だ

ジャガー初のSUV「F-PACE」はハイペースで台数を伸ばしているそうだが、ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマーケティング・広報部でディレクターを務める若林敬一氏は、E-PACEがF-PACEを超えて「最も売れるジャガー」になると予想する。

F-PACEより小型で価格もこなれたE-PACEでは、「ジャガーは値段が高くて、大きくて、自分よりも年上の人が乗るもの」というような先入観を持つ人にアピールし、新規顧客を開拓する構え。狙うのは30~40代だが特に30代とし、世帯年収としては1,000万円以下の顧客の割合を6割くらいにしたいとする。また、主に男性が乗るものとの固定観念にも挑戦し、女性比率で4割くらいを目指したいとも若林氏は語っていた。

SUVを作る1つ目の理由は「市場の声」、2つ目は…

では、より具体的に、E-PACEではどのくらいの販売台数を狙うのだろうか。数値目標を掲げることは避けた若林氏だが、ヒントはくれた。まず、日本自動車輸入組合(JAIA)によると、2017年の日本におけるジャガーの新規登録台数は2,614台。販売台数の内訳では同ブランドで最も売れている「F-PACE」と「XE」がトップ争いを繰り広げており、この2モデルで総販売台数の7~8割を売っているという。そして、E-PACEはF-PACEよりも売れるというのが若林氏の見立てだ。

  • ジャガー「E-PACE」

    「E-PACE」の日本における受注受け付けは始まっている。3つのグレードのスタート価格は「E-PCAE」が451万円、「E-PACE R-DYNAMIC」が504万円、「E-PACE FIRST EDITION」が738万円だ(左は若林氏、右はハンソン社長)

さて、なぜジャガーがSUVを作るかという冒頭に掲げたテーマに戻ると、まずは「売れるクルマだから」というのが1つ目の理由のようだ。実際のところ、世界的にクルマの需要はセダンタイプからSUVにシフトしているのが現状。日本でもミニバン、セダン、ハッチバックなどからの乗り換えが増えていると若林氏は分析する。シートが高く、荷室の広いSUVは「日本を含め、全世界の顧客が本当に欲しがっている種類のクルマだ」とはハンソン社長の言葉だ。ただし、ジャガーは市場の声に従って、仕方なくSUVを作っているのではない。