既報のとおり、ANSYSは2月13日、すべての設計技術者のためのリアルタイムシミュレーションツールと銘打った「ANSYS Discovery Live」の提供を開始したが、これを受けて日本法人であるアンシス・ジャパンは2月20日、都内でANSYS Discovery FamilyならびにANSYS Discovery Liveの機能概要などについての説明会を開催した。

ANSYS Discovery Familyは、「ANSYS Discovery AIM」「ANSYS Discovery SpaceClaim」「ANSYS Discovery Live」の3つのツールの総称。SpaceClaimとAIMは既存の同名製品を統合したもので、今回のLiveの提供でDiscovery Famllyとしての体制が整ったこととなる。

対応範囲としては、Liveが流体解析と構造解析に対応しつつ高速処理が可能という特長がある。AIMはさらに電磁界解析にも対応したほか、ハイエンドソルバと同等性能を有しており、高精度解析が可能といった特長となっている。

  • ANSYS Discovery Familyの3製品の概要とポジショニング

    ANSYS Discovery Familyの3製品の概要とポジショニング

同ファミリの提供形態は3パッケージに分けられる。SpaeClaimのみを利用する「ANSYS Discovery Essentials」、SpaceClaimとLiveを利用することができる「ANSYS Discovery Standard」、そしてAIMを含めたすべてを利用できる「ANSYS Discovery Ultimate」だ。契約形態は年間契約のサブスクリプションで、価格はStandardで数十万円台の中盤とのことで、同社曰く、「ANSYS史上、もっとも安い価格設定」とのことで、初めて使う人への導入のしきいを下げた戦略を採用している。

  • ANSYS Discovery Familyは3つの製品パッケージが用意されており、それぞれターゲットユーザー層が異なる

    ANSYS Discovery Familyは3つの製品パッケージが用意されており、それぞれターゲットユーザー層が異なる。下位のEssentilasは、解析エンジニアなどではなく、デザイナーなど、解析とこれまで縁遠かった人でも使ってもらえるようなパッケージになっているという

というのも、3つのパッケージに分けたという部分も含めて、Discovery Familyは、これまでの解析の専門家が活用するというよりも、むしろデザイン・設計をする人が流れで解析もして、それをさらにデザインにフィードバックする、といったことを意識した製品設計となっているのだ。そのため、同社でも、「Essentialsは従来の3Dモデルを編集するモデラーやデザイナーを対象としたパッケージ。Standardは、設計者として解析に触れてこなかった人や、3D CADにバンドルされていた解析ツールを上手く扱えなかったといった人などとするほか、Ultimateは解析専任スタッフなど、技術を有している人がさらに解析を活用するためのパッケージ」と説明している。

LiveはSpaceClaimをベースとしたツールで、CADとCAEの比率としては7:3でCADよりのツール。デザインに寄った解析が可能とのことで、「短期間でアイデアを具現化して、他社に先駆けてモノを市場に出していく企業に向いている」と同社でも説明している。実際に、スキー・スノーボード製品で知られる仏RossignolがDiscovery Familyを活用した開発を先行して行っていることが明らかにされているが、リアルタイムで解析が行えるため、アイデアをそのまま3Dデザインに落とし込み、かつその構造解析結果などを反映して、その場でデザインの変更を併せて進めていくといった手順を取ることができたとのことで、実物としての試作品(プロトタイプ)が出来上がってくるのを待たなくても、その場で解析ができるという特長により、開発期間の短縮を実現できたとしている。

  • Rossignol and ANSYS Discovery

また、Liveのデータとしては、既存の3D CADツールのネイティブデータを取り込むことの可能なほか、*.dxfといった中間ファイルにも対応しているので、2Dデータを3D化して、解析を行うことも可能だという。

  • Discovery Liveを活用することで、熱解析、構造解析、モーダル解析、流体解析の4つを手軽にリアルタイム処理で行うことが可能となる
  • Discovery Liveを活用することで、熱解析、構造解析、モーダル解析、流体解析の4つを手軽にリアルタイム処理で行うことが可能となる
  • Discovery Liveを活用することで、熱解析、構造解析、モーダル解析、流体解析の4つを手軽にリアルタイム処理で行うことが可能となる
  • Discovery Liveを活用することで、熱解析、構造解析、モーダル解析、流体解析の4つを手軽にリアルタイム処理で行うことが可能となる。リアルタイムというのは、メッシュを切るという作業がなく(バックエンドで処理している)、構造を変化させた瞬間に、再計算結果が表示されるという意味で、ギリギリの薄さなどを狙った設計の場合、従来ソリューションではなかなか処理が終わらない、ということもあったが、そうした部分もすみやかに処理を終えることができる工夫が施されている

なお、Discovery Liveはすでに国内向けにも提供が開始されており、同社の代理店などから購入することが可能なほか、15日間の無料トライアルも用意されており、アンシス・ジャパンのWebサイトからアカウント登録後、入手することが可能となっている