日本電信電話(NTT)は、非常に簡素な構成でさまざまな凹凸触覚刺激を提示できる磁性触覚印刷技術を開発したことを発表した。

  • 磁性触覚印刷技術を使用した凹凸感提示

    磁性触覚印刷技術を使用した凹凸感提示

同社はこれまで、視覚・聴覚の次に実用的に利用可能な感覚として注目を集めている「触覚」についての研究を行っており、人間の皮膚の仕組みや触り心地の知覚原理の解明を行う一方で、「ぶるなび」のような触覚ディスプレイの研究も行っている。しかし、これまで主流であった振動子やスピーカを手や指に装着する情報提示型の触覚提示では、装置の重さ、大きさ、配線、電源確保などの問題がある。一方で、紙や金属の凹凸、木片や布地など素材の持つ形状や質感を利用するマテリアル型の触覚提示では、電源や配線の問題を気にしないですむ反面、提示する触覚を対象に応じて動的に変化させることができない。

このたび同社が開発した磁性触覚印刷技術は、磁性マテリアル表面に形成される磁場を編集可能にすることで、マテリアル型のように扱えながらも多様な触覚提示を実現する手法を確立した。これにより、マテリアル型のようにシンプルで扱いやすく、かつ情報提示型のようにさまざまな触覚の提示を実現している。

  • プロッティングマシンにネオジウム磁石を装着し、シート上の任意の位置を磁化可能に

    プロッティングマシンにネオジウム磁石を装着し、シート上の任意の位置を磁化可能に

同技術では、2枚の薄い磁性ゴムシートのみを用いて触覚提示を行うことができ、シート同士をこすり合わせると、シート表面は平らであるのにまるでボコボコとした凹凸がシート間にあるかのような感覚を生み出す。触覚提示に電源を必要とせず、一度書き込まれた凹凸感は長期間保持される。

例えば、磁性パタンを書き込んだ磁性シートを冊子状にすれば「触覚絵本」を作ることができる。また、磁性シートへの磁性パタンの書き込みに必要な材料、機材も一般的に購入可能なもので構成できるため、触覚コンテンツを創造する「触感DIY体験」を低コストで提供できるなど、今後はおもちゃや本、床や壁面へと触覚コンテンツの幅を広げる展開が期待される。

  • 磁性パタンにより、「強度変化」や「選択性」といった機能が設計可能に

    磁性パタンにより、「強度変化」や「選択性」といった機能が設計可能に