東北大学は、水産加工品の生産工程の"見える化"に関する実証実験を行い、生産効率の向上につながる効果を得ることができたと発表した。同実証実験では、生産ラインを撮影した画像をAI技術を用いて診断し、生産個数の計測や2級品の検出などの精度の検証を行った。

  • 実証実験における撮影ポイント

    実証実験における撮影ポイント

同実証実験は、NECソリューションイノベータ、極洋、極洋食品および東北大学大学院工学研究科情報知能システム研究センター(以下、東北大IIS研究センター)が共同で、2017年8月~11月(うち、評価対象品目の計測は2日間)に極洋食品の塩釜工場にて実施したもの。

これまで水産加工品の生産工程では、熟練技術者の目視による品質チェックが一般的だったが、熟練技術者の高齢化と水産加工業の従事者の減少により、技術の継承と人手不足が大きな課題となることが予測されており、1級品と2級品の判別において、従来の精度とスピードを維持できなくなることが懸念されている。また、多くの水産加工品の生産現場では、生産工程の”見える化“が行われていないため、1級品と2級品が発生する原因を捉えられず、歩留まり率の向上に課題を抱えている。

  • 見える化画面(イメージ)

    見える化画面(イメージ)

同実証実験では、エビフリッター・コロッケ・フライの3品目の生産工程において、「下ごしらえ」 や「調理」など工程ごとのAI画像診断による生産個数計測を行うほか、生産ラインを1秒間に15枚~20枚程度の頻度で撮影し、画像診断技術による2級品の検出を行い、それぞれの精度を調査した。また、2級品の発生パターン分析による原因の究明も行なった。その結果、生産個数の計測においては99%以上の精度を実現し、2級品を検出においては撮影画像1枚あたり0.05秒以内で検出することができた。また、一部の水産加工品において、調理と2級品発生原因との関連の可能性を確認することもできたという。なお、同実証実験は、極洋および極洋食品の水産加工製品生産技術と、東北大学が持つ高精度の画像処理技術学術研究、NECソリューションイノベータが有するAI技術を活用して行われた。

今後は、同実証実験で得られた成果を活かし、生産工程に実装できる仕組みの実現を目指すという。また、「マシンインテリジェンス研究会」と連携し、VRやロボティクスなど最新のICTを活用し、生産現場のさらなる効率改善や、熟練者の技術の継承、生産工程の省人化などを推進していくということだ。