SAPジャパン 常務執行役員 デジタルエンタープライズ事業副統括 宮田伸一氏

SAPジャパンは2月15日、同社のAI戦略に関する説明会を開催した。同社はデジタルイノベーションシステム「SAP Leonardo」で機械学習アプリケーションを提供している。

初めに、常務執行役員 デジタルエンタープライズ事業副統括 宮田伸一氏が、「SAP Leonardo」について説明した。同社は現在、業務システムのトランザクションを処理する従来のビジネスを「Run」、大量のデータからインサイトを得てそれを回す仕組みを「Win」と位置付け、それぞれを一体化してエンド・ツー・エンドで提供するという戦略を掲げている。

「SAP Leonardo」は「Run」に属するソリューションであり、「機械学習」「ブロックチェーン」「データインテリジェンス」「ビッグデータ」「IoT」「アナリティクス」という6つのテクノロジーコンポーネントを必要に応じてSAP Cloud Platform上に展開する。

「SAP Leonardo」の下で展開されるソリューションは「ML Application」「Connected Solutions」「Industry Accelerator」は3つのジャンルに分類できる。「ML Application」において、機械学習アプリケーションを提供する。

宮田氏は、同社のAIビジネスについて、次のように語った。

「AIに関する技術を提供するベンダーはさまざまだが、われわれは企業システムの全体を見ており、その知見をもとに、企業に対して機械学習の導入を提案することができる。企業がすぐに使ってもらえるAIを提供することが可能だ。いわば、企業AIのトップランナーと言えるのではないだろうか」

  • 「SAP Leonardo」の概要。機械学習アプリケーションを提供する

SAPジャパン プラットフォーム事業本部 エバンジェリスト 松舘学氏

同社の機械学習に関する取り組みについては、プラットフォーム事業本部 エバンジェリストの松舘学氏が説明した。松舘氏は「機械学習において、アルゴリズムは各社にそれほど差がない。では、何が違うのか。Googleは検索データを大量に有しており、それらを活用して、自社のサービスに生かしている。SNSを運営するFacebookも同様に、大量のデータを持っている。こうした企業に対し、われわれはGDPの75%のデータを抱えるERPに強い」と、同社の機械学習における強みを語った。

続いて、松舘氏は「機械学習はデータを入れることが重要。ERPがあれば、機械学習に必要なデータが既に蓄積している状況と言える。また、会計はルールベースで動いているため、機械学習を使わない手はない」と述べた。

同社は、企業向けの機械学習のビジョンとして、機械学習によって人間がやっている作業を自動化することでコストを削減し、そのコストを現在できていないことを可能にする新たなシステムに投資することを実現することを目指している。

  • SAPの企業向け機械学習のビジョン

同社は、マーケティング、財務、販売とサービス、デザイン、運用・保全、人事、インバウンドロジスティクス、アウトバウンドロジスティクスなど、さまざまな分野に対し、機械学習向けのアプリケーションを提供している。

  • SAPの機械学習アプリケーションが提供する機能

松舘氏は、同社の機械学習アプリケーションの例として「SAP Cash Application」を紹介した。同アプリケーションでは、機械学習を活用して履歴から自動的にパターンを学習して、入金の消込処理を行う。

  • 「SAP Cash Application」の機能

通常、企業で売掛金を管理する部門が入金の消込処理を行う時、情報の不足、異なる通貨に基づく請求書の発行、支払方法の不一致など、さまざまな課題に直面する。

こうした状況の下、「SAP Cash Application」を導入することで、売掛金の処理にかかる時間と手間を低減することが可能になるという。実際、SAP South East Asiaでは同ソリューションを請求書のマッチング処理に適用しており、効果を上げているそうだ。