大日本印刷(DNP)は2月1日、DNPグループの丸善CHIホールディングスと連携して、書店のPOSなどのデータ分析にAIを活用し、需要を予測することで読者のニーズにフレキシブルに対応する書籍の製造~物流~販売を組み合わせた体制を新たに構築した。

出版流通業界では、書籍・雑誌を合わせた出版物の販売額が年々減少しているほか、新刊本の返品率が40%に達するなど業界全体の課題の解決が求められているという。今回、これらの課題に対して書籍用自社倉庫である書籍流通センター(SRC)と、グループ書店での在庫、出版社などの倉庫を連携させたフレキシブルな物流体制の構築を行う。

これにより、製造から物流・販売までのリードタイムを短縮し「欲しいときに欲しい本を手に入れたい」という読者の需要に対応するサービスを構築。また、書店のPOSデータの分析による需要予測システムの活用も進め、出版社、全国のリアル書店、ネット書店での生活者ニーズとのマッチングを促進していく。

新サービスの特徴として「フレキシブルな製造・物流体制で読者に本を届けるサービスの向上」「書店のPOSデータの分析による需要予測システムの活用」「多様な物流スタイルで読者のさまざまなニーズに対応」「書店でもECサイトでも欲しい時に欲しい本の入手が可能」の4点を挙げている。

読者に本を届けるサービスの向上については、書籍流通センター(SRC)と書店在庫、出版社倉庫を連携させて、読者に本を届けるスピードの向上を推進。今回、構築した物流体制と、読者の需要に合わせることで返品や在庫の削減を目指す製造体制を組み合わせて、配本精度の向上や、読者の満足度の向上につなげていく。

書店のPOSデータの分析による需要予測システムの活用では、同社グループ書店だけでなく協力書店のPOSデータなども活用することで、より精度の高い需要予測を行い、需要予測と出版社や書店からの注文情報を組み合わせ、1部から大部数の増刷まで、需要に応じたフレキシブルな製造を実現するという。協力企業を含めた適地生産も進めることで、短期間の製造を可能とし、店頭に在庫が無い場合でも、読者に迅速に本を届けるサービスの構築を進めていく。

多様な物流スタイルで読者のさまざまなニーズへの対応では、物流においても出版社から書店への直接納品や、増刷・製造した書籍の一部をSRCから書店へ直接発送するなど、読者の要望に合わせてフレキシブルに対応する。従来のような全国同一商品・同一販売だけでなく、読者の需要に応じた書店ごとに特徴のある商品の調達を可能にする。

書店でもECサイトでも欲しい時に欲しい本の入手が可能な点に関しては、これらの取り組みにより読者は最寄りの書店やECサイトなどの希望する流通チャネルで、迅速に欲しい本が入手できるようになることに加え、出版社はオンデマンドな製造・物流と組み合わせることで、読者の需要により的確に応えることができ、書籍を長期間販売できるようになるとしている。

書店は、店舗での欠品防止や店舗に在庫がない書籍の販売につなげることで、販売機会の損失を低減させるとともに、特徴ある店づくりによって読者の満足度を高めることができるという。

DNPでは、今回構築した書籍のフレキシブルな製造体制と独自の流通倉庫であるSRCを核にした他の流通倉庫との連携をさらに拡大することを計画している。また、丸善ジュンク堂、丸善雄松堂、図書館流通センターなどのグループ会社や、出版流通イノベーションジャパン、その他の書店および出版社とも協力し、出版物の品揃え強化、業界の収益性改善、業務プロセスの時間短縮などに取り組み、出版市場の拡大を図る考えだ。