スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「Pixel Visual Core」についてです。

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Pixel Visual Core(PVC、ピクセル・ビジュアル・コア)は、Googleが初めて設計/開発したSoC -- System On a Chip、システムの動作に必要な機能の多くを1つのチップで実現した集積回路 -- の名称です。2017年10月に発表されたAndroid端末「Pixel 2」と「Pixel 2 XL」に採用されています。

PVCには、Googleが設計した画像処理ユニット(IPU)が8基と演算ロジックユニット(ALUs)が512基搭載されています。画像関連機能で要求される高負荷の演算処理を高速に、しかも消費電力を押さえつつ実行できる特長があります。IPUが持つ効率性はハードウェア制御の緻密さによるところが大きく、その意味で従来型プロセッサに比べソフトウェアの重要性が増しています。

具体的な活用事例としては「HDR写真」が挙げられます。HDR写真には、異なる明るさの写真を短時間に連続撮影し適切に合成処理することが求められますが、PVCは汎用プロセッサに比べ5倍高速でありながら10分の1以下の電力消費量で済みます。

現時点におけるPVCの位置付けは「画像処理に特化した専用SoC」ですが、Googleの機械学習ライブラリ「TensorFlow」をサポートするなど、今後は他分野での活用も見込まれています。Pixel 2に搭載されているタイプのカメラでは、電子的な処理により"背景のボケ"を得ますが、そのときPVCによりTensorFlowを高速に動作させられれば、機械学習の成果をより迅速に反映させることが可能になると考えられます。

ただし、2017年11月末時点ではPVCならではの機能は実現されていません。Googleの公式ブログによれば、数ヶ月以内にサードパーティー製アプリでもHDR写真を撮影可能になるソフトウェアアップデートの提供を予定しているとのことですが、PVC対応端末の少なさもあり普及にはしばらく時間がかかりそうです。

  • Googleが設計したSoC「Pixel Visual Core」