妊娠してもまだまだ働きたい、出産後も子育てしながら仕事をがんばりたいと思う女性は多いですよね。しかし、「職場に迷惑がかかるので自分から休みたいと言えない……」と考える人は少なくないのではないでしょうか。

職場によっては、妊娠・出産・子育てへの理解が進んでいないところもあります。そこで今回は、働く妊産婦さんにとって頼りがいのあるアイテム「母性健康管理指導事項連絡カード」(以下、母健連絡カード)と知っておきたい制度についてご紹介します。

  • 働く妊婦が使える制度、もらえるお金にはどんなものがある?

まず知っておきたい「母健連絡カード」の存在

職場の理解を得たい、制度を活用したいと考えたとき、まず頼りになるのが「母健連絡カード」の存在です。「母健連絡カード」とは、働いている妊産婦が主治医が行った指導事項の内容を、職場へ的確に伝えるためのカード。病院で依頼すれば、医師が記入してくれます。

  • 「母性健康管理指導事項連絡カード」の様式(厚生労働省)

医師が妊産婦に対し、健康状態から仕事内容の変更、勤務時間の短縮、休業の必要性を判断した際、もちろん妊産婦自身が口頭で申し出れば、事業主は適切な措置を講じる必要があります。しかし、医師ではない妊産婦が正確に説明するのは、職場への配慮もあり難しいこともありますよね。

母健連絡カードを使えば、提出さえすれば事業主が状況を理解してくれるので、心理的な負担を和らげることができるでしょう。

  • 事業主に正確な情報を伝えることができる

このカードは、医師が記入する正式な書類のため、ケガや病気での診断書と同様に取り扱われます。そのため、診断書を別途提出する必要はありません。ほとんどの母子健康手帳に様式が記載されていますのでコピーして使用するか、産婦人科でももらうことができます。

費用もかかりますが、診断書よりも安価で発行するようにと病院へは指導されています。病院によって費用が異なるので、事前に確認しておくと良いでしょう。

働く妊婦がうれしい4つの制度・手当て

ここからは、実際に働く女性が妊娠した場合に利用できる諸制度についてご紹介しましょう。

(1)通院休暇

妊娠が分かれば、定期的に健康診査を受けることになります。その際、会社に申請することで、勤務時間内に通院に必要な時間を確保できる「通院休暇」という制度があります。

○妊娠中
・~妊娠23週/4週間に1回
・妊娠24週~35週/2週間に1回
・妊娠36週~/1週間に1回

○産後(出産後1年以内)
・医師等の指示に従って必要な時間を確保する
※参照: 厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

有給か無給か、休暇の申請方法などは、その企業ごとの就業規則によって変わってきますので、事前に確認をとっておきましょう。

(2)勤務時間の変更、勤務の軽減

妊娠中及び出産後の働く女性が医師から指導を受けた場合、その働く女性が受けた指導を守ることができるように、事業主は必要な措置を講じなければならないとしています。

○指導事項を守ることができるようにするための措置
・妊娠中の通勤緩和(時差通勤、勤務時間の短縮等の措置)
・妊娠中の休憩に関する措置(休憩時間の延長、休憩回数の増加等の措置)
・妊娠中または出産後の症状等に対する措置(作業の制限、休業等の措置)
※参照: 厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

無理をして切迫流産などにならないよう、まずは主治医に早めに相談し、必要な措置を職場の方とも相談しましょう。

(3)妊娠・出産等を理由とした不利益な取り扱いの禁止

妊娠・出産を理由に不利益な取り扱いを受けることは禁止されています。どのようなことが不利益とされるのか、一部ご紹介します。

○不利益な取り扱いと考えられる例
・解雇すること
・期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
・退職または正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
・降格させること
・減給をし、または賞与等において不利益な算定を行うこと
※参照: 厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

もし妊娠を報告した際に「退職してもらう」「次の契約更新はしない」と言われ、不利益を受けた場合は、1人で悩まず各都道府県労働局などに相談しましょう。

(4)傷病手当金

傷病手当金はケガや病気から就業不能となった場合に、健康保険から支給されるものです。正常な妊娠・出産は病気とはみなされず、健康保険の適用から除外されているため、出産に関する休業は傷病手当金の対象にならないと考えている方も多いと思います。

しかし、切迫流産・早産や妊娠悪阻などで医師の判断により安静にするための休業であれば、支払われる可能性があります。

病気でなくとも、妊産婦さんが守られるべき制度や法律はあります。正しい理解を深め、職場や主治医と話し合いましょう。そして、職場や家族の協力も得ながら、おなかのお子さまを大切に育てていきましょうね。

著者プロフィール

マイライフエフピー代表 加藤葉子
子育て真っ最中のファイナンシャルプランナー。子どもを授かったことをきっかけに、教育費や学資保険の仕組みなどに興味を持ち、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、3年で子どもの教育資金を貯める。現在は、全国の女性からの教育費・老後資金・起業・離婚・投資なのお金の相談を中心に執筆・マネー講師として活動しながら、ファイナンシャルプランナーの育成にも力を入れている。自身のホームページ「女性とシングルマザーのお金の専門家