NECとさくらインターネットは12月5日、EUの次世代インターネット官民連携プログラム(FI-PPP:EUの第7次研究枠組計画におけるICTプロジェクト)で開発・実装された基盤ソフトウェア「FIWARE(ファイウェア)」を活用したスマートシティ・ビル向けのデータ流通システムの共同実証実験を2018年3月から福岡市で開始すると発表した。

FIWAREは、FI(Future Internet)とWARE(次世代インターネット基盤ソフトウェア)の造語で、FI-PPPが次世代インターネット技術における欧州の競争力強化と、社会・公共分野のスマートアプリケーション開発を支援するために、開発した基盤ソフトウェア。

仕様はオープンかつロイヤルティフリーで、オープンソースソフトウェアによるリファレンス実装と、オープンAPIを持つ。実装するオープンAPIは「NGSI」のコンテキスト管理に係るインタフェース「NGSI-9/10」で、データ流通やデータモデルなどの仕組みを標準化したベンダーニュートラルな仕様であり、既存の各種IoT基盤と並立して業種を超えたデータの相互利活用を促すという。

実証実験の目的は、欧州を中心にスマートシティを実現するシステムとして活用実績があるFIWAREを活用し、日本におけるスマートシティ・ビル向けのデータ流通システムを構築し、データを利用するステークホルダーのニーズや課題抽出、環境構築、運用ノウハウなどを蓄積する。

期間は2018年3月から1年間を予定しており、さくらインターネットの提供する「さくらのクラウド」上に、NECがFIWAREに準拠したデータ流通環境を構築し、これを実証実験参加者(企業、団体、個人など)に無償提供する。参加者は、登録データを利用することで、自社のビジネス等に役立てるとともに、データ流通におけるニーズや課題などを抽出し、参加者間で共有。

課題などの取りまとめは、NECおよびさくらインターネットの組織内研究所であるさくらインターネット研究所が共同で行い、実証実験は福岡市と同市周辺を対象に開始する。開始にあたり、両社が開催するデータ流通環境の説明会を通じて、参加者を広く募るほか、参加者間での知見の共有を図る場も用意していく考えだ。

期待される効果としては、データ流通環境を無償提供することにより、スタートアップやベンチャー企業、中小企業などの参加を促進し、地域ごとの課題、データを利活用する際の共通課題の早期抽出を期待できるという。さらに、参加者間によるノウハウの共有により、データ流通市場におけるエコシステムを構築し、新たな価値を創造するスマートアプリケーションの創出も期待されるとしている。

今後、実証実験を通じて得られたノウハウは、両社内へフィードバックするとともに、データ流通に関わる各業界団体へのフィードバックも併せて実施し、早期のデータ流通市場成立・活発化に寄与していく。