「初めての1人暮らし」と言ってもいろいろなケースがあります。学生が入学とともに1人暮らしをするケース、学生だけど親が転勤して1人暮らしになるケース、社会人が就職に伴って1人暮らしを始めるケース、すでに社会人だけど親元から独立するケースなど、いろいろあります。

社会人でもサラリーマンと自営業でも多少違いますし、個人によっては、特別な手続きを必要とする場合もあるでしょう。下記の項目を参考に、自分で手続き一覧を作成するとスムーズです。

  • 1人暮らしを始めるときに用意するもの

手続きなど

手続きなどは段取りよくしなければ、何かと手間がかかります。転居する場所が遠隔地の場合などは、郵送してもらったり、戻って必要な書類を整えたりと面倒になります。是非一覧を作って、事前にそれぞれの関係先に具体的な手続き方法を確認しておきましょう。

■ アパート入居に必要な書類

アパートを決めるとき、契約上必要な書類について説明を受けると思います。住民票や保証人など、必要な書類を用意します。自分用の印鑑も必要です。2度手間にならないように必要な書類を不動産業者にしっかり確認しましょう。

■ 転出証明書

学生の場合は住民票を新しい住所に移さなくても違法ではないようですが、原則は実際に住んでいる場所に住民票を移すことになります。転居の前後2週間以内に手続きしなければなりません。今まで住んでいた市区町村に転出届を出して「転出証明書」を入手し、新しい市区町村に持っていって転入手続きをします。社会人の場合は、厚生年金に加入していない限り、国民健康保険や国民年金の手続きも行います。転入の際に、その後の手続きに必要な部数の住民票も入手しておきましょう。コピーでよい場合もあります。

■ 年金・健康保険証関連の手続き

会社員の場合は住民票を移動しても会社に住所の変更を届けるだけですし、新しく就職するのであれば、社会保険に加入しますので、市区町村での手続きは不要です。学生の場合は親が国民年金加入者の場合は、親元の市区町村で、遠隔地被保険者証を交付してもらいます。

学生用の遠隔地被保険者証の名称は自治体によって違いがあるようです。また、親が厚生年金に加入している場合は親が会社に申請して学生用の被保険者証を交付してもらいます。会社や自治体によっては、家族個々に保険証を交付しているところも増えているようです。その場合は社会保険の場合は住所変更、国民健康保険の場合は、転出・転入先の自治体それぞれに応じて必要な手続きを行います。

注意が必要な点は、学生が会社に就職して厚生年金に加入することになる場合です。それまで国民年金の保険料を支払っているか学生納付特例制度を利用していると思いますが、厚生年金との間に必ず空白がないようにしてください。空白時にアクシデントが起こらないとは言い切れません。

■ 電話関連

最近は固定電話を引かないケースもあるようですが、固定電話を引く場合はいくつか方法があります。NTTの場合は施設負担金を支払う「加入電話」と、施設負担金が不要な「ライトプラン」があります。ライトプランは月々の利用金が多少割高になります。そのほか、KDDIなど数社が扱っている「直収電話」があります。携帯電話やケーブルテレビなどと組み合わせたりするお得なプランもあります。通話料がお得な光電話もありますが、停電時には使えないので、災害時には不便です。

■ 運転免許・通帳・その他住所変更

特に運転免許証は手続きを行う際の身分証明になりますので、早めに変更手続きを行っておくと便利です。学生で今まで通帳を持っていない場合は、家賃の引き落としや光熱費の引き落としに通帳が必要になります。

■ 電気ガス水道

引っ越し当日には開通していないと不便です。荷物の到着時に開通するように連絡しておきましょう。

■ テレビ

アパートやマンションが導入している設備によっては、視聴方法が限定される場合があります。

家財等の準備

学生で卒業後は親元へ帰るケース、社会人でも一旦社会生活を経験したのちに実家の稼業を継ぐ予定など、1人暮らしが短期間のケースと、そのまま親元を離れるケースでは多少家財等の準備も違ってきます。

いずれ実家に帰るときに不要になるもので、なくても済むものは節約できます。また大学や会社の寮に入居する場合は、その寮の設備によっても異なります。昔の集団就職のテレビ映像が何かの話題に引用されているのを見かけることがありますが、おそらく実家から贈られる荷物もごくわずかだったでしょう。私も最初は寮生活でしたが、私物と言えば、布団袋と柳行李とスーツケースのみで、部屋で使える収納も50㎝くらいのロッカーと半間分の押し入れだけでした。今では考えられないシンプルさです。

初めての一人暮らしと言ってもケースは様々なので、ここでは具体的家財を列記しませんが、家財で確認するのは、照明器具、ガスコンロ、エアコンなどがどこまでついているかです。アパートを見に行くときは、まだ入居中の場合もあるでしょう。カーテン等は自分で取り付けるのが一般的ですが、本来窓に合わせてセットされているので、前の入居者が置いていくのか、持っていくのかも確認しておくとよいでしょう。よほど趣味に合わないものでない限り費用の節約になります。そのほか処分予定のものなどを聞いておくと、使えるものがあるかもしれません。

1人暮らしをするときは、将来のプランを考えるチャンスです。初めが肝心! あまり必要でないものが身の回りにあふれるのはストレスですし、お金の無駄です。人生を美しくデザインする第一歩ですので、本当に必要なものだけを選ぶ訓練のつもりで始めてみてください。下記に紹介している以前のレポートにも書きましたが、親元の生活レベルは親の実力で、自分の実力ではないのです。

以前のレポートで関連する記事『初めての一人暮らし、住む部屋をどう選ぶ?』を書いていますので、参考にしてください。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。