働き方改革を成功に導く処方箋 - ソフトバンクと日本マイクロソフトが語る、日本企業の働き方改革の未来(前編)

2017年7月、働き方改革は大きな転換期を迎えたといえる。政府が主導して同月に実施されたテレワーク・デイは900団体以上、約6万人が参加し、また東京都の取り組みである「時差Biz」にも多くの社会人が参加するなど、流行ではなく本質的な取り組みとして、働き方改革が推し進められつつあるのだ。

しかし、多くの企業が同取り組みを進めるものの、長年の企業経営で染みついた企業の労働慣行を変えることは当然ながら容易なことではない。また、具体的な効果が想起し難いために、何を指標として取り組みを進めるべきか頭を悩ませている企業も多いことだろう。そこで本企画では、自ら働き方改革を大きく推進し、また顧客の働き方改革の支援も積極的に手がけている日本マイクロソフトとソフトバンクのキーパーソンの対談を通じ、働き方改革が生み出す効果と、成功に導くカギを紐解いていきたい。

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 コミュニケーションズパートナー本部長
辻純氏

日本マイクロソフト 業務執行役員 コミュニケーションズパートナー本部長 辻純氏

ソフトバンク株式会社
法人事業統括 法人事業戦略本部 コア事業統括部 統括部長
中塚博康氏

ソフトバンク 法人事業統括 法人事業戦略本部 コア事業統括部 統括部長 中塚博康氏

ソフトバンクと日本マイクロソフトが語る、日本企業の働き方改革の未来
【前編】働き方改革が生み出す成果とは(本記事)
【後編】働き方改革を成功に導く鍵とは

働き方改革の“アーリーアダプター”として何を重視したか

──まずは、お二人がそれぞれの会社に主に担っている役割についてお聞かせください。

辻:各通信事業者とのアライアンスビジネスを統括しています。多くのアライアンス・パートナーのなかでも、ソフトバンクさんはとても重要な戦略的パートナーとなっています。

中塚:基本的に法人向けビジネス戦略の立案から販売推進までを担当しています。そうしたなかでも特に注力しているのが、当社でコア事業と呼んでいる、モバイル、音声、データといった通信サービスの販売推進ですね。

──ありがとうございます。密なパートナーシップでビジネスを伸張させてきた両社様ですが、どちらも早い時期から社内で働き方改革を推進されています。具体的にどのような取り組みを実践しているのでしょうか。

辻:働き方改革には様々な側面がありますが、当社では“ビジネスの成長を牽引するための働き方改革”にフォーカスした取り組みを推進しています。これは経営戦略としての働き方改革であり、お客様の生産性向上に貢献する為に、当社の社員自らが最新テクノロジーを駆使して生産性の高い働き方を体現するというものです。2011年2月の東京都内のオフィス統合および本社移転を機に、経営戦略の一つとして、全社規模で働き方改革を推進する取り組みを開始しました。

ソフトバンク 法人事業統括 法人事業戦略本部 コア事業統括部 統括部長 中塚博康氏

ソフトバンク 法人事業統括 法人事業戦略本部 コア事業統括部 統括部長 中塚博康氏

──「生産性の高い働き方」について、もう少し詳しく教えて頂けますか。

辻:一言で表すならば「いつでもどこでもコミュニケーション/コラボレーションができ、社員が活躍できる」環境です。これを浸透させるために、当社では、新しいオフィスとなったのを絶好の機会と捉えてオフィス環境を働き方改革にふさわしいものとしました。品川本社オフィスでは、フリーアドレス制を導入して、60%の社員の個人席(固定席)をなくしました。そして固定電話もなくし、メール、通話はもちろんオンライン会議などを「Office 365」のコミュニケーションプラットフォーム「Skype for Business」で行うように推進しました。働きやすい環境づくりの為だということに加えて、お客様に新しいクラウドサービスを使っていただく場合にクラウド環境を使ってどんなことが実現できるかを社員自身が実証することも目的でした。

──業務環境を物理的に変えることで、働き方の変革に強制力を持たせたのですね。社内制度も変えたのでしょうか。

辻:実は、就業規則を変更したのは2016年5月なのです。2011年の本社移転後も就業規則の大きな変更をせずに、全社員でテレワークを実施しました。経験を重ねることで、さらに効率が上がる方法など色々なノウハウが出てきました。そこからもっと効率や生産性を上げ、個人のポテンシャルを最大限に発揮できる環境づくりを制度の面からも推し進めていくために、2016年に就業規則を変更。在宅勤務制度を廃止し、テレワーク勤務制度を導入しました。この新しい制度で、社員の「自身にとっていちばん効率的な働き方を、自ら判断して実行する」という行動を加速することができます。

中塚氏:ソフトバンクも、日本マイクロソフトさんとアプローチが近しいかもしれません。当社の場合も、新しいソリューションなどお客さまに販売するものについて、基本的にまず自分達が使ってみることをポリシーとしています。実際に社内で活用してみて、それでこれはいいなと感じることができたら販売フェーズに移す形です。そのため働き方改革に関しても、ビジョンに従って制度やICT環境を整えていくというよりも、まずはツールが先に全社に与えられて、それからPDCAサイクルを回していく、という動きを取っています。

日本マイクロソフト 業務執行役員 コミュニケーションズパートナー本部長 辻純氏

日本マイクロソフト 業務執行役員 コミュニケーションズパートナー本部長 辻純氏

──2017年4月には「Smart & Fun!」を掲げた新たな人事制度を導入されていますが、制度面の対応についてはいかがでしょうか。

中塚氏:仰るとおり、2017年4月より在宅勤務制度を拡充・拡大するなど、制度面の整備も進められています。ICT環境の整備が先にある点で、この点もマイクロソフトさんと類似している部分かもしれません。こうしたICT、制度の両側面で働き方改革を進めているという当社の経験は、お客様へソリューションを提供する上でも大きな優位性になると考えています。

──ありがとうございます。ところで、日本マイクロソフトさまが説明された「(ICTの)活用を推進する取り組み」は、そこでは行ってこられたのでしょうか。

中塚氏:たとえば2008年におけるスマートフォンの取り扱い開始を例に挙げれば、ソフトバンクとしてはこれに価値付けをして販売しなければなりません。つまり、どの企業よりもモバイルデバイスを活用して、そこでの価値を生み出すことが求められるのです。ソリューション単位での取り組みながら、浸透に向けた強制力は非常に強いといえます。2008年以後も様々なモバイルデバイス、クラウドサービスを同様に社内で利用して、浸透のためのノウハウも含めたナレッジとして蓄積してきました。また、いわゆるオフィス業務に限らず、当社が展開する携帯キャリアショップの業務改善についても実践してきました。こうした過程を経ていくつかのサービスを組み合わせたものが、結果として“働き方改革”につながり、業態問わずに提供できる当社のソリューションとなっています。

日本マイクロソフトとソフトバンク、両社ともに「強制力をもった推進」が、新たな働き方を浸透させる鍵となっている。こうして浸透した新たな働き方は、実際にどのような成果を生み出しているのだろうか。

生産性が26%向上!営業スタッフ1人当たりの案件数が倍増!働き方改革の具体的な成果

──働き方改革を推進する企業は急増しています。一方で、残念ながらその効果がわからないという企業も多い状況です。働き方改革を進めて得られた成果について教えてください。

辻:当社では2016年に、これまでの取り組みの効果を測定すべく、様々な指標から取り組み以前の2010年との比較を実施しました。その結果、劇的な成果がそこで示されています。一部を紹介すると、まず事業生産性が26%向上し、社員一人あたりの売上高が大きく増加しました。また、女性従業員の離職率は40%減少し、社員満足度調査におけるワークライフバランスの項目も40%向上しました。この5年の間、当社の正社員数はほとんど変わっていませんが、国内における事業規模は拡大を続けています。1人当たりの生産性が向上していなければこの成長は成し遂げられなかったでしょう。

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日本マイクロソフトが2016年に実施した、2010年と2015年とを比較した「働き方改革」の成果検証データ。「働き続けたい環境づくり」「生産性向上」「コスト削減」といったあらゆる側面で高い成果が生まれていることが分かる

中塚氏:具体的な成果が示せなければ、お客さまに対して説得力のある提案ができません。そのため当社でも、各取り組みの成果を可視化するようにしています。例えば業務にスマートフォンやタブレットを取り入れた際、オフィスでペーパーレス化を徹底したのですが、結果として従業員が手元に抱える紙を9割削減することができました。これを外販部門だけでなく、たとえば面接現場での紙の利用率を0%にするなど、あらゆる部門において実施しています。

──そこでは生産性向上といった面の効果も生まれましたか。

中塚氏:ペーパーレス化の目的には、「文書を作成する業務を(極力)排除する」ことも含まれています。たとえば営業部門の場合、「モバイルデバイスだけあれば商談できる環境」を整備することによって、ペーパーレス化を、営業スタッフが日々の営業活動に専念できる環境づくりとして推進しています。スタートからわずか3年ぐらいですが、お客様との接点を増やしたことで契約までのリードタイムが34%短縮され、1人あたりの営業スタッフが獲得する案件数はほぼ倍増しています。また、2016年に在宅勤務を試験的に実施した部門では、多くの従業員が「時間の有効活用」を実感したという調査結果も出ています。

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従来紙をベースに行っていた店舗での契約業務を電子化したことによって、1人あたりの顧客登録でユーザーが待つ時間は4分の1にまで短縮。このように、ペーパーレス化はサービス価値の向上にもつながっている

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全社的に推し進めたペーパーレス化は、採用活動においても大きなメリットをもたらしている。物理的な紙の削減は、単にコスト効果だけでなく、管理の煩雑さの解消や、個人情報漏えいリスクの低減といった側面でも効果を生み出している

不明瞭だと捉えられがちだが、働き方改革の推進は確たる成果を生み出しえる。それでは、こうした成果を生み出すにはどのような点に留意する必要があるのか。後編ではこの点について、引き続き対談から紐解いていきたい。

ソフトバンクと日本マイクロソフトが語る、日本企業の働き方改革の未来
【前編】働き方改革が生み出す成果とは(本記事)
【後編】働き方改革を成功に導く鍵とは

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