近年、コスト削減やセキュリティリスクの軽減対策としてVDI(Virtual Desktop Infrastructure)が大きな注目を集めている。各端末のデスクトップ環境とデータをサーバーに集約。ユーザー側の端末はOSやデバイスを自由に選択できる、大半の処理はサーバー側が行うため端末のリソース不足に悩む事がなくなる、端末側にデータを残さないことでセキュリティを確保する、など多くのメリットがある。現在、本格的な導入に向け、一部を試験的に導入している企業も多い。だが、実際に試験導入してみると、予想もしなかった課題が見付かることがある。

では、具体的にどのような課題があるのか。またその課題を解決するために必要なものは何か。 今回は、クオリティソフト株式会社※が持つ情報を元に、一つの想定事例を挙げて、課題と解決策について具体的に解説する。

※クオリティソフト株式会社は、2009年設立以降、様々なパッケージソフトやクラウドサービスの提供している。また、同社が提供するマルチデバイス管理ソシューションである「ISM CloudOne」は国内において30,000社の導入実績がある(2013年10月現在)

<想定企業> システムインテグレーター M社 (従業員数1,000人)

【背景】 マルチデバイス時代に備えて仮想環境を試験導入

現在、M社内には数多くの端末があるが、例えば開発部はLinux、経理・総務・営業部門はWindowsなど、部門ごとに環境がまちまちだ。そのため、資産管理が煩雑化し非効率な状態となっている。今後は営業の効率を高める為にタブレットの導入も視野に入れていることもあり、管理の効率化とセキュリティの向上を目指してVDIへの移行を検討。まずは各部署から選抜した100台について試験的にVDIを導入した。そこで思いもよらない事態に遭遇する。

【課題・問題】 リソースを共有しているが故に、不明瞭となるボトルネック

「サーバーのリソースには、かなり余裕を持って導入をしました。ですが実際に運用してみると、頻繁にパフォーマンスの低下が起こったのです」(情報システム部 N氏) 業務に支障をきたすようなパフォーマンスの低下が発生した場合、これまでのような物理環境であれば、それぞれのPCをリプレイスするかハードウェアを追加するしか方法がなかった。 だが、VDIのような仮想環境の場合であればリソースの追加や変更に、柔軟に対応することができる。だが、それらの対策は、パフォーマンス低下の原因がどこにあるのか、はっきりしなければ実行する事ができない。 勿論、サーバーのリソースを更に追加すれば、パフォーマンスの低下は防げるだろう。だが、原因も分からないまま追加を申請しても許可が下りるはずもない。

VDI環境が持つ、大きな問題がここである。つまり、リソースを共有して利用しているため、どこがボトルネックになっているかが不明瞭なのだ。 「パフォーマンスの低下が、システム全体の問題なのか、個別の環境によるものなのか、ピーク時間が影響しているのか、それらを判別する指標というものが存在しないため、なかなか原因追及ができませんでした」(N氏) しかも、M社はVDIの試験段階であるためVDI環境と物理PC環境が混在している。この状態で原因を特定することは至難の業だった。

課題・問題のポイント
・パフォーマンス低下の原因が特定できない
・リソースの追加を行う場合でも原因不明のままでは申請が通らない
・原因特定には、指標となるデータが必要