背景

スマートデバイスの登場によって、パラダイムシフトの時を迎えている企業IT。「iPad/iPhone」や「Android」搭載端末を筆頭に、ビジネス用途でも問題なく利用できる環境が整ってきた。特に、企業向けのビジネスアプリケーションや独自アプリの開発環境が充実してきたことは、ビジネスユースへの普及を加速させている。実務レベルで本格的に運用すれば、あらゆる分野・領域で革新的なまでの業務改善を期待できるだろう。

しかし、その一方で管理者の立場になってみると、セキュリティや情報漏えい対策など、解決すべき課題は少なくない。中でも、“管理工数の増加”は非常にやっかいな悩み事だ。いかに管理負荷をかけずに運用していくかが、導入成否の分かれ道である・・・。

課題・問題

膨大な資料・・・。“業務効率化”をめざして、Android端末150台を全国に配布

大手機械メーカーのサポート業務を行うグループ企業Y社は、都内の本社を中心に全国6ヶ所に拠点を構えています。同社はこのほど、営業やエンジニアなど外出の多い従業員の“業務効率化”を目的に、各拠点へのスマートデバイスの導入・活用を検討していました。

というのも、親会社が製造した機器の保守・メンテナンスを請け負う業務上、エンジニアは日常的に分厚いマニュアル資料を携行しなければなりません。その文書量は膨大で、持ち運びが非常に困難だったため、現場からは「スマートデバイスを利用できないか」という声が頻繁に挙がっていたのです。 しかし、その導入に当たってはいくつかの問題がありました。同社システム管理部A部長はこう語ります。

「営業ツールとして、デジタル文書を端末内に格納することはスマートデバイスの典型的な利用方法であり、現場からの声も当然と思われました。しかし、当社の文書の中には製品仕様や設計に関わる社外秘情報も多く、情報漏えいリスクが懸念されたため、端末にダウンロードさせるのは避けるべきという結論に達しました。そこで、文書データはサポートDBへ格納し、必要に応じて端末から都度アクセスする方法を取りました」

ほどなく同社は、Android端末の導入を決定するとともに、Android OSで稼動するDB接続アプリケーションを開発。外部業者に委託して、端末150台にキッティングした上で各拠点に配布し、導入作業を完了させました。

アプリ配布に落とし穴が!人的リソース不足の中、管理工数とセキュリティが相反・・・

ところが、導入から数ヵ月後のことでした。A氏らは重大な落とし穴に気づきます。Android OSのバージョンアップに伴い、DB接続アプリケーションにも改修が必要だったのです。

「盲点でした。Android OSがバージョンアップされる度に、改修済み接続アプリを再キッティングするために、その都度各拠点から端末を回収するわけにはいきません。かといって、社内向けのビジネスアプリだけに、Google Playなどのオープンマーケットで公開することは論外でした」(前出A氏)

同社システム管理部のスタッフはわずか3名。今回のアプリケーション配布に限らず、スマートデバイス導入後の管理工数増加は悩みの種となっていました。

「マンパワー不足から、各端末のウィルス対策は利用ユーザに任せざるを得ず、セキュリティソフトのアップデート漏れや禁止ソフトのダウンロードなどによるマルウェア感染リスクとは常に隣り合わせでした。加えて、端末はレンタルなので契約状況も把握しなければならず、スマートデバイス管理のための人的リソース不足は深刻な問題となっていました」(前出A氏)

管理工数とセキュリティの相反要件をどうするか-。A氏は早急に解決策を探す必要がありました・・・。

課題・問題のポイント

■スマートデバイスの利用にあたり、増大する管理工数とセキュリティ要件が相反
■頻繁なAndroid OSバージョンアップの度に発生するアプリ配布の工数がネック
■セキュリティ対策やレンタル契約など、端末管理のための人的リソース不足が深刻化